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阿達 正浩; 齋藤 勇一; 千葉 敦也; 鳴海 一雅; 金子 敏明*
no journal, ,
構成原子の配列構造(直線及び三角形状など)が異なるクラスターイオンが薄膜を透過すると、透過後のクラスターイオンの平均電荷に違いが現れるという理論的な予測が報告されている。そこで、構成原子あたり数MeVの高速Cクラスターイオンについて炭素薄膜への照射実験を行い、独自に開発した測定システムを用いて薄膜透過直後の構成原子の構造と個々の電荷を同時に測定した。この結果、理論予測通り直線構造では三角構造よりも平均電荷が高く、直線構造の両端に位置するイオンは中心に位置するものに比べて平均電荷が高くなることを実験で初めて確かめることができた。今後は、各価数の構成比が膜厚に応じてどのように変化するのかをさらに詳細に計測して物質中のクラスターイオンの状態(価数の構成比の変化)を明らかにすることで、物質とクラスターイオンとの反応機構の解明を目指す。この一環として現在、膜圧を変えて測定した価数の構成比のデータを定量的に解析するために、測定データから荷電変換断面積の計算を試みている。測定結果は膜内でのクラスターイオンのエネルギーロスが無視できないことを示唆しており、現在、荷電変換断面積の計算コードの開発を行っている。これを用いて、測定した価数構成比の値から荷電変換断面積の値を計算しているので、この結果についても報告する。
小川 修一*; 吉越 章隆; 石塚 眞治*; 寺岡 有殿; 高桑 雄二*
no journal, ,
本研究では、高輝度放射光を用いた光電子分光法でSi(001)表面酸化過程をリアルタイム観察し、第1層酸化膜形成後の界面歪みのアルファSiとベータSiの第2層酸化速度との相関を調べた。実験はSPring-8のBL23SUに設置してある表面化学反応分析装置で行った。n型Si(001)基板を酸素で酸化させた。O1s光電子スペクトルは2つの成分を用いて大変によくフィッティングできた。一方、Si2p光電子スペクトルをフィッティングするために、Si基板からのピーク(SiB)と酸化状態に対応したピーク(Si, Si, Si, Si)、さらに、アルファSiとベータSiのピークを設定した。第1層酸化温度を300Cから600Cまで変化させたとき、第1層酸化完了後のベータSi強度は温度増加とともに減少したが、アルファSi強度はほとんど変化しなかった。この結果は、第1層酸化温度の増加とともに界面第1層の歪みが減少していることを示している。界面歪みが高温で減少することは、吸着酸素の格子位置で説明でき、この格子歪みの減少により点欠陥発生も減少するため第2層酸化速度が減少すると考えられる。
高井 満美子; 大道 博行; 匂坂 明人; 小倉 浩一; 織茂 聡; 加道 雅孝; 余語 覚文; 森 道昭; 林 由紀雄; Bulanov, S. V.; et al.
no journal, ,
チタンサファイアテラワットレーザーと金属薄膜ターゲットとの相互作用により、非常に直進性のよい、広がり角度10度程度のサブメブ領域のプロトンビームが得られた。このプロトンビームを使って、ミクロンサイズのメッシュ構造の影絵を取得することに成功した。この影絵を使うことにより、プロトンビームの定量的な評価を行い、横エミッタンスが0.1mm mrad以下であることがわかった。
林 由紀雄; 神門 正城; 小瀧 秀行; 大東 出; Chen, L.-M.; 福田 祐仁; 近藤 修司; 森 道昭; 小倉 浩一; 大道 博行; et al.
no journal, ,
近年、RALのVulcanレーザーで43mSv、LULIで0.5mSvの線量がそれぞれ310W/cm, 1-310W/cmの集光条件で線量が観測されるに至った。これらの値は人体への線量限度に比べて無視できない量であり、超高強度場科学における放射線管理の重要性が認識されつつある。超高強度場科学の分野では受動型線量計がおもに使われてきた。ただし受動型線量計はリアルタイム線量確認が困難であるため、実験中の被曝に気づかずしばらく放置される可能性がある。放射線をリアルタイムで確認できる線量計が極めて有用である。そこでCWの放射線に対しリアルタイム線量確認が可能な電離箱を今回、超高強度場科学実験で利用することをわれわれは試みた。受動型線量計と電離箱を同一場所に同時に設置し、JLITE-Xレーザー(300mJ, 70fs, Heガス(3-5MPa), 510W/cm)の条件でテストした。その結果、40ショット積算で受動型線量計が1.16mSvで、電離箱は0.60 0mSvを示した。電離箱は受動型線量計に比べて多少検出感度は低いが、超高強度場科学でのリアルタイムモニターとして有用であると考えている。
小瀧 秀行; 大東 出; 神門 正城; 福田 祐仁; 林 由紀雄; Chen, L.-M.; 本間 隆之; Bolton, P.*; Ma, J.-L.; 森 道昭; et al.
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高強度レーザーにより生成されるプラズマ中のウェーク場を用いて小型超短パルス高品質電子ビーム源をつくることができる。本電子ビームは、高品質でパルス幅が短いため、高品質電子ビーム源や構造変化測定等への応用が考えられる。15TW, 25fsのチタンサファイアレーザーを用いて実験を行い、最大75MeVの準単色エネルギーの電子ビーム発生に成功した。しかし、1パルスでの電子発生は不安定である。そこで、2パルス衝突型の高品質電子ビーム発生実験を、3TW, 70fsのレーザーを用いて、衝突角45で行い、15MeVの高品質電子ビーム発生に成功した。2パルスの使用により、ウェーク場への電子トラップと加速とが分離でき、レーザーやプラズマ密度等のパラメーターを最適化することにより安定な高品質電子ビーム発生が可能であることを示した。
及川 将一*; 佐藤 隆博; 柏木 啓次; 宮脇 信正; 倉島 俊; 奥村 進; 横田 渉; 神谷 富裕
no journal, ,
原子力機構高崎研究所のイオン照射研究施設(TIARA)では、AVFサイクロトロン(K=110)の垂直ビームコースにおいて集束方式重イオンマイクロビーム装置の開発を進めている。本装置は、高LET重イオンを空間分解能1mのマイクロビームにするとともに、単一照射(シングルイオンヒット)が可能であることを特徴としており、細胞の放射線応答機構の解明や宇宙用半導体のシングルイベント発生機構の解明などにおいて強力なツールとなることが期待されている。空間分解能の評価実験では260MeV Neビームを用い、Cuグリッドをターゲットとした2次電子イメージングと、固体飛跡検出器(CR-39)へのシングルイオンヒットによるビームサイズ計測を行った。その解析の結果、半値幅をとることにより各々、0.65m0.67m及び0.79m0.64mと見積もられ、目標の1mよりも高い空間分解能を達成できることが明らかになった。
佐々木 明; 西原 功修*; 砂原 淳*; 西川 亘*; 小池 文博*; 香川 貴司*; 田沼 肇*
no journal, ,
輻射流体シミュレーションによる、EUV光源の特性の評価や最適化を進めている。HULLACコードで求めたSnの発光線波長,遷移確率のデータをもとに輻射放出・吸収係数の計算を行い、それを用いた流体シミュレーションを行って実験と比較した。4-13価のSnイオンの4d-4f, 4d-5p共鳴線とサテライト線の波長やスペクトル幅についてCIの効果を考慮した計算を行い、特に共鳴線についてはスペクトルの微細構造の考慮と、電荷交換分光法の結果による発光線波長の修正を行ったところ、スペクトルや変換効率のパラメータ依存性が実験とほぼ一致するようになった。炭酸ガスレーザー励起を想定し、より高温のプラズマ中に生成する14-20価イオンについても、波長13.5nm帯での発光線を同定し、波長やスペクトル形状についてCIの効果を考慮する改良を行った。
山内 俊彦; 中垣 圭太*; 管野 善則*; 小林 清二*; 三枝 幹雄*; 竹本 亮*; 山下 直飛人*; 川嶋 友紘*
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アドバンストセラミックスの中でダイヤモンド合成に関しては、高温・高圧や低圧気相合成が、核融合用特殊窓や表面保護用コーティングの有用性から注目されている。この低圧気相合成にはCVD法とイオンビーム・スパッタリング蒸着の2つの流れがあり、ここでは興味深いCVD法(27MHzRFプラズマ)を採用し装置の開発を始めた。このCVD法による合成研究は複雑でまだ理論的に解明されてない点もあり、興味深い。さらにレーザーをターゲット表面のクラスター,分子及び原子等に照射し活性化させることにより合成を制御できると考えられている。実験をサポートする理論的計算としては、結晶の外側をすべて水素原子で終端しGaussian03で計算実験を行う近似法がある。最近は東京大学生産技術研究所で開発されたPHASEコードを使うことにより結晶のダイレクト解析が可能となり、計算精度は向上した。今回は大学との共同研究で進めてきたICPアンテナ内挿型CVDプラズマ発生装置で生成するプラズマの特性や生成膜などに関して述べる。
笹瀬 雅人*; 山本 博之; 岡安 悟; 山口 憲司; 社本 真一; 北條 喜一
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本研究では、半導体鉄シリサイド薄膜の創製及び物性改質におけるイオン照射効果について、透過型電子顕微鏡による観察を中心に検討した。イオン照射により、(1)結晶性良好なシリサイド半導体の成膜が可能になった、(2)膜内にナノ領域の改質相を導入した結果を報告する。基板を1keV Ne, 310ions/mにてスパッタ処理を行った後、イオンビームスパッタ蒸着法により-FeSi薄膜を作製した結果、Si(100)基板上にエピタキシャル成長した薄膜を得た。スパッタ処理条件の最適化により、結晶性及び表面構造を大きく損なわない程度の欠陥が基板に導入され、鉄とシリコンの円滑な相互拡散を促した結果、結晶性の良好な薄膜成長が可能となった。さらにこの薄膜に対し高エネルギー重イオン(320MeV Au)を照射した結果、膜内に平均直径6nmの円柱状欠陥が生成した。この結果は半導体相中に導電相の形成が実現し得ることを示している。以上の結果から、イオン照射により生じる欠陥が、鉄シリサイド薄膜の創製や改質に有効に働き得ることを明らかにした。
大内 真二*; 室賀 政崇*; 鵜殿 治彦*; 山田 洋一; 山本 博之; 菊間 勲*
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-FeSiのPLの発光起源は未だ不明確であり、その要因の一つにSi基板からの発光スペクトルとの切り分けが困難な点がある。-FeSi単結晶を基板とし、ホモエピタキシャル成長させればこの点が明確となる。このため-FeSi基板表面の清浄化について検討した。-FeSi(101)基板のエッチング直後、及び真空中で950C, 95分間熱処理後のRHEED像から、エッチング直後の試料においても自然酸化膜が形成され、RHEEDの強度は弱い。一方、真空中熱処理によりストリークは明瞭となり菊池線が観測された。さらに大気中に放置し自然酸化膜をつけた基板について950Cでの熱処理時間とRHEED強度変化の関係を検討した。この結果、放置時間が長い程RHEED強度が増加するまでの時間は長くなるが、90時間大気中に放置した基板においても長時間の熱処理によって清浄表面のRHEEDパターンが得られた。これらの結果から成膜前の基板を超高真空中にて950Cで熱処理することによって自然酸化膜を除去できることを明らかにした。
若谷 一平*; 室賀 政崇*; 大内 真二*; 鵜殿 治彦*; 山田 洋一; 山本 博之; 菊間 勲*
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-FeSiホモエピタキシーのためには基板表面の状態を知る必要がある。しかし-FeSiバルク単結晶の表面構造に関する報告は少ない。本研究では、-FeSi単結晶の幾つかの低指数面についてRHEEDによる表面観察を行った。作製した単結晶を成長ファセット面に平行に研磨し、X線回折によって方位を特定することで-FeSi(100),(101),(110),(111),(311)基板を準備した。これを10Torr台の高真空中で950Cの高温処理を行った。その後基板温度を100C以下に下げ、RHEED像を観察した。(110)面に電子線を[001]方向から入射した時のRHEED像を観察した結果、明瞭なストリークパターンが得られ、その格子間隔は約6.14であった。また、複数の入射方位に対して対称性の良いストリークパターンが見られた。360に渡る観察結果から、入射方位と格子間隔の関係はバルク-FeSi(110)面の格子配置と同じ周期性で説明できることがわかった。
高橋 正光; 海津 利行; 水木 純一郎
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分子線エピタキシャル法は、原子レベルで制御された結晶成長を実現する代表的な手法であり、半導体ナノ構造の作製においても重要な役割を果たす。近年、半導体ナノ構造は、多層膜構造を基本とする量子井戸構造から、量子細線・量子ドット構造へと低次元化が進んでいる。これらはもはや平面的な膜構造ではなく、三次元的な構造であるため、平均膜厚・界面ラフネスなどの測定にとどまらない新しい構造評価法が必要とされている。シンクロトロン放射光を用いたX線回折法は、静的な構造評価法として、半導体表面構造のほか、量子ドットなどの三次元的な形状・ひずみ分布の決定に用いられるようになってきている。われわれは、これらの手法をもとに、半導体ナノ構造成長中のその場・リアルタイムX線測定を実現するため、放射光施設SPring-8のBL11XUにおいて、X線回折計とMBE成長槽とを一体化した装置を用いた研究を進めている。本講演では、従来の方法ではその場測定が難しい、ナノ構造の実空間における形状・格子定数分布及び組成について、GaAs上のInAs成長,Sbで覆われたGaAs(001)表面を例に、放射光X線回折による研究を紹介する。
佐伯 盛久; 大場 弘則; 山田 洋一; 山本 博之; 江坂 文孝; 横山 淳
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反応性気体中で固体試料のレーザー蒸発を行い、発生するプラズマと気体試料との反応生成物を基板に堆積することにより化合物薄膜を作製することができる。この手法は反応性PLD法と呼ばれており、例えばアセチレン雰囲気下でシリコンをレーザー蒸発するとアモルファスシリコンカーバイド(a-SiC)膜が形成されることが知られている。本研究では反応性PLD法により2つの異なる作製条件下でa-SiCを作製し、さらにその作製した薄膜の構造・組成比を反射型フーリエ変換赤外分光法(FTIR),エネルギー分散型蛍光分光法(EDX)及びX線光電子分光法(XPS)により分析した。そして、シリコンプラズマと反応するアセチレンをネオンガスで希釈することにより、生成するa-SiC膜中のシリコンとカーボンの組成比を変えられることを示した。また分析の結果、作製したa-SiCの膜厚はmオーダーになっており、また、膜の表面と内部ではSiとCの組成比が異なっていることを明らかにした。
匂坂 明人; 大道 博行; 余語 覚文; 小倉 浩一; 織茂 聡; Ma, J.-L.; 森 道昭; Pirozhkov, A. S.; 高井 満美子; 大石 祐嗣*; et al.
no journal, ,
高強度レーザーと物質との相互作用により生成される高エネルギーのX線,イオン,電子は、テーブルトップの量子ビーム源として注目されさまざまな応用が提案されている。特に高エネルギーイオンについては、医療用としての小型加速器への利用が期待されている。今回、レーザー励起の高エネルギーイオン発生を目的とし、薄膜ターゲットからのプロトン発生実験を行った。電力中央研究所設置のチタンサファイアレーザー(中心波長800nm,パルス幅50fs)を用いて、銅とポリイミドの薄膜ターゲットに照射した。厚さ3mの銅ターゲットを用いた場合、プロトンの最大エネルギーは1MeV程度であった。一方、厚さ7.5mのポリイミドターゲットを用いた場合、プロトンの最大エネルギーは2MeVを超えて発生した。ポリイミドターゲットを用いた場合、銅ターゲットよりもプロトンの最大エネルギーが2倍程度増加することがわかった。講演では、得られた実験結果の詳細について報告する予定である。
大島 武; 菱木 繁臣; 岩本 直也; 河野 勝泰*; 伊藤 久義
no journal, ,
線照射によりpチャンネル炭化ケイ素(SiC)金属-酸化膜-半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)中に発生する界面欠陥(界面準位や酸化膜中固定電荷)及びこれら欠陥の熱安定性を調べた。実験にはn型6H-SiCエピタキシャル膜上に800Cでのアルミニウム(Al)注入及び1800Cでの熱処理によりソース・ドレインを、1100Cでの水素燃焼酸化によりゲート酸化膜を形成したpチャンネルMOSFETを用いた。線照射は室温にて0.878.70kGy/hのドーズ率で行った。電気特性劣化を調べたところ、線照射量の増加に従い界面準位濃度が増加し、それに伴ってチャンネル移動度が低下すること見いだされた。さらに、照射後にアルゴン中で30分間の熱処理を行ったところ、熱処理温度の上昇とともに界面準位密度が減少することが見いだされ、それに対応するように、線照射後に初期値の40%程度まで減少したチャンネル移動度が熱処理温度の上昇とともに回復し、400C熱処理後に65%程度となることが見いだされた。また、線照射により3.8Vから13.5Vまでシフトした「しきい値電圧」に関しても、熱処理により5.4Vまで回復することも観測された。
Sudjadi, U.; 大島 武; 岩本 直也; 菱木 繁臣; 河野 勝泰*
no journal, ,
p型六方晶炭化ケイ素(6H-SiC)エピタキシャル基板上に作製したショットキーダイオードの線照射効果を調べた。ショットキー電極はニッケル/アルミニウム(Al)を蒸着することで、裏面オーミック電極はAl蒸着後にアルゴン雰囲気中で1100C,60秒間の熱処理を行うことで形成した。線照射は0.51.0Mrad/hourの線量率で行った。線照射による電気特性の変化を調べた結果、35kGyまでは吸収線量の増加とともに逆方向バイアス印加時のリーク電流が減少し、35kGy以上では増加に転じることが判明した。一方、順方向特性としては、35kGyまでの照射では飽和電流が減少するが、それ以上の吸収線量では変化は示さずほぼ一定の値であることが見いだされた。
小池 雅人; 石野 雅彦; 今園 孝志
no journal, ,
軟X線発光分析等に適した軟X線発光分光器として不等間隔溝球面回折格子を用いた比較的小型の平面結像型軟X線分光器が広く使用されているが一般に1keV以上の領域では回折効率が低く実用性が乏しくなる。最近、発表者らはラミナー型球面ホログラフィック回折格子を開発し、この技術を用いて1.6keVまで測定可能な平面結像型軟X線分光器を実現した。しかしながら、金等の単層膜を蒸着した在来の回折格子をそれ以上の高エネルギー領域で使用しようとすると、全反射の臨界角が89度以上になる。このため、回折格子の効率と入射光量が非常に小さくなるだけでなく、収差も許容範囲を超え、実用的な分光器を構成できなくなる。一方単層膜の代わりに軟X線多層膜をコーティングすることで87度程の入射角で高反射率が実現でき、多層膜のバンドパスの範囲内で回折格子の効率を著しく増加させ、さらに収差を抑え、数倍の入射光量を取り込み得る。発表では基礎研究及び産業分野で要望の強い、13keV領域で使用可能な多層膜ラミナー型ホログラフィック球面回折格子を用いた実験室光源用高効率軟X線平面結像型発光分光器の開発について述べる。なお、本研究は文部科学省リーディングプロジェクト「ナノスケール電子状態分析技術の実用化開発」の一環として行われているものである。
石野 雅彦; 小池 雅人; 佐野 一雄*
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1-8keV領域用の分光光学素子として開発したCo/SiO多層膜回折格子は4-6keVのエネルギー領域で40%以上の効率を、W/C多層膜回折格子は8keVで38%の効率をそれぞれ達成している。回折効率はこれまでの最高値であるだけでなく、十分実用的なレベルに達していることから、これらの多層膜回折格子を用いた応用が検討されている。しかし、高輝度放射光のような高い熱負荷を伴う光源での利用や実験装置のベーキング処理など効率だけでなく高い耐熱性も要求される。W/C多層膜については多くの報告がなされており、実用的な耐熱性を持つことが知られている。しかし、われわれが見いだしたCo/SiO多層膜の耐熱性についての知見はない。そこでCo/SiO多層膜の耐熱性評価を目的として、Si基板上に成膜したCo/SiO多層膜に真空加熱処理を行い、X線回折測定による多層膜構造の変化と1-2keV領域における軟X線反射率を評価した。その結果、十分実用的な400度までの熱処理に対して、安定した多層膜構造と軟X線反射率を保持していることを確認した。
赤羽 温; 青山 誠; 小川 奏; 辻 公一; 張本 鉄雄*; 河仲 準二*; 西岡 一*; 藤田 雅之*; 山川 考一
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高輝度アト秒光量子ビーム生成を目指し、高強度数サイクル光パラメトリックチャープパルス増幅(OPCPA)システムの開発を行っている。LD励起低温冷却型Yb:YLF CPAレーザーから出力されるパルス幅可変の広帯域励起光を結晶内交差角の異なる2ビームに分割しOPA結晶に入射させることにより、帯域幅400nm以上,パルス幅10fs以下のレーザー光の発生を目指している。今回1ビームでのOPCPA励起を行い、理論予測と一致する200nm以上の超広帯域増幅を実現した。実験ではパルス幅80fsのモード同期発振器出力を2分割し、一方をCPAレーザーシステムの種光に、他方をフォトニック結晶ファイバーで白色光に変換した後、ガラスブロックによりパルス伸張を行いOPCPAの入力信号光として用いた。CPAレーザー出力光を2倍波に波長変換し、中心波長509nm,バンド幅3nm,パルス幅2.4psの励起光と2ps程度にパルス伸張したエネルギー0.4nJの広帯域信号光とをBBO結晶(7mm長)中で交差角0.6度でオーバーラップさせることにより増幅帯域200nm以上のOPA信号光(増幅利得10)が得られた。
吉越 章隆; 寺岡 有殿
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これまでOのSi(111)-77表面で室温吸着にて観測される準安定分子状吸着種は、バックボンドに酸素原子が存在するSiアドアトムへの分子状吸着種で、清浄表面での前駆的吸着状態と異なることを示唆する結果を得た。しかし、O1s XPSでは、バックボンドに酸素原子が幾つ存在するか不明である。そこで、Si2p XPSによるSi酸化数の情報も加味して初期吸着過程の詳細を調べたので報告する。実験は、SPring-8のBL23SUのSUREAC2000で行った。超高真空中の加熱(1150C)で清浄表面を作成し、バリアブルリークバルブにより酸素圧力を制御(5.310Pa)した。O1s及びSi2pの交互スキャンリアルタイムXPS測定を行った。準安定分子状吸着種の観測される条件では、Si2p XPSスペクトルにおいてSiまでの酸化状態が観測されたことから、バックボンドに1つ酸素原子が解離吸着したSiアドアトム表面上に酸素が分子状で吸着する()ことが裏付けられた。さらに準安定分子状吸着種が存在しない条件では、Si2p XPSスペクトルにおいてSi以上の酸化状態が観測された。この結果は、ではなくの吸着酸素分子が解離して、一方の酸素原子がアドアトム上に残り、他方がバックボンドに移った構造が形成されたことを示している。